黄斑疾患
黄斑と黄斑疾患
網膜は眼球の底にあるカメラのフィルムのような働きをする場所で、300ミクロン(1ミリの3分の1程度)という薄いシート状の組織です。
中心の黄斑部という直径6mm程度の網膜は大変感度が良く、物を見るときはこの黄斑部で見ています。黄斑部に病気が起こると見ようとする所が見えない中心暗点、電柱や格子がゆがんで見える変視症という症状が出ます。
黄斑部は視力の中心を担当する大切な網膜の中心部です。一番よく働いている部分で数多くの黄斑疾患が存在します。加齢性黄斑変性、黄斑上膜、黄斑円孔その他、社会的失明の原因となる可能性が有ります。眼科での瞳を広げて詳しく診察する「散瞳検査」が必要です。
- 黄斑疾患の症状
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- 視界がゆがんで見える
- 視界の一部が欠けている
- 視力が急に低下した
- 視野が部分的に見えづらくなる
- まわりは正常だが、見ようとする中心部が見えにくい
- 大きく見える、または小さく見える
加齢黄斑変性
50歳以上の人の黄斑部の網膜の下に新生血管が生えて、出血や滲出が起こる病気です。病気の大きさや勢いによって視力低下の程度はさまざまです。視力を維持するために繰り返し治療を続け、長期間にわたり経過観察を続ける必要があるのが特徴です。
治療は主に眼球内に薬剤を注射する硝子体注射という治療が行われます。当院でも数多くの硝子体注射を行っています。
- 【正常眼】
- 【加齢黄斑変性】
網膜静脈閉塞症にともなう黄斑浮腫
網膜の静脈に流れの悪いところができ、そのせいで網膜に出血が起こる病気です。基礎疾患として糖尿病、高血圧など生活習慣病をお持ちの方に多い疾患です。黄斑部に腫れ(黄斑浮腫といいます)が起こると視力が低下します。治療は、黄斑浮腫を抑える働きのある薬剤の硝子体注射です。数か月ごとに注射を繰り返しおこなうことで黄斑部を良い状態に保つことができます。また虚血(血が完全に流れなくなった場所)におちいった網膜にはレーザー光凝固治療を行います。
中心性漿液性脈絡網膜症
黄斑部の網膜の下に血液成分の貯留が起こり、物が歪んでみえたり(変視症)、真ん中が見えにくくなる症状(中心暗点)が現れます。30歳から40歳代の比較的若い人、ストレスを抱えている人に起こることが多いと言われています。
網膜の下の組織(脈絡膜)から血液成分の漏れが起こり網膜の下に貯留するのが原因です。当院ではフルオレセイン蛍光眼底造影で漏れを確認し、漏出点に対してレーザー光凝固治療を行っています。
レーザーを行うことができない場所に漏出点がある場合には、特殊なレーザー治療機器(光線力学療法)のある医療施設にご紹介しています。
診断と治療
検査について
3次元眼底像撮影装置 DRI OCT TRITON PLUS
[トプコン社]
シート状の網膜を観察することができる顕微鏡のようなものです。病気の診断、経過観察に大変重要な情報を与えてくれる、欠かすことのできない器械です。当院では網膜の血液の流れを調べるOCTアンジオグラフィーという造影検査も同時にできるTOPCON社の最新型装置であるトリトンを使用しています。
以前は腕の血管から造影剤を注射する蛍光眼底造影検査が必要であった眼底疾患ですが、この最新機器の登場で患者様にかかる負担を大幅に減らすことができています。
硝子体注射
眼球の白い部位(強膜)からごく細い針で薬剤を注入する治療で、現在は眼底疾患の治療の主流になっています。血管内皮増殖因子(VEGF)は新生血管を生やしたり、既存の血管からの血液の漏れを促進させたりする働きがある生理活性物質のひとつです。
VEGFを抑える薬(抗VEGF薬)を注射することで、新生血管の発育を抑えたり、血管からの漏れを抑えることができます。
注射は手術室にて清潔操作でおこないます。十分点眼麻酔をしますし、注射は2,3秒で済みます。注射眼帯をして帰宅していただき、翌朝には診察をおこないます。